庁舎改築に関する出雲大社の見解
旧庁舎は昭和38年に菊竹清訓氏設計により、多くの方々のお力添えを賜りながら竣工しました。 しかし、以下に一部概述しますように、様々な課題を抱えて今日に至ることにより、将来を見据え、このたび「庁舎」を改築致します。すなわち、境内建物として歴世に伝統ある「庁舎」を、次代の遷宮に向けての役割を担う建物として、未来に繋ぐ重要な意味を有する建物として、蘇りを果たしたいと考えております。改築計画に際しましては設計者である菊竹清訓氏の想いを受け継ぐ菊竹事務所OBの方たちと相談しつつ実施しております。
旧庁舎は竣工の1ヶ月後以来、各所で雨漏りが発生し、菊竹清訓氏と相談しつつ継続的に修理を重ねてきましたが、その累積費はすでに建設費を上回っているのが現状です。
旧庁舎に計画設置していた宝物展示は雨漏り防止不能のため、結局、新たな宝物館建設を余儀なくされました。
旧庁舎は竣工以来、50年以上を経過してコンクリート本体及び金属部の劣化が進捗し、耐震診断など安全確認の専門家による調査を行いましたが、参拝者等、不特定な人々が利用する建物として安全性を確保できないのが現状です。
菊竹清訓氏の、「庁舎を木造改築」するお考え 『2003年、DOCOMOMO100選を選定したのを機に、テーマと登場者の異なる3件のシンポジウムを行った。その一つ菊竹清訓、林昌二、槇文彦という建築界の大御所を招いて各々の建築題材とした建築談議を行った。菊竹は、「出雲大社庁の舎」を事例として取り上げ、いずれ木造として建て変えたいと述べ、一瞬会場が溜息ともいえる空気に揺らいだ。』(兼松紘一郎「山陰建築小紀行<3>出雲大社庁舎と学生の計画案」〈日々・from an architect〉より)
平成12年、円滑な祭事奉仕のための祭事関係用施設として、国立公園内での規制に従い拝殿の北~東側に地下室建設を計画していましたが、事前調査での歴史的文化財としての遺構・遺物の検出による保存要望をうけ地下室建設を停止した経緯があります。改築の新庁舎は、断念した祭事関係用施設の部分機能を担うものともなります。
御遷宮に伴う臨時施設として仮拝殿(現在の祈祷受付・待合所)を建設しましたが、御遷宮以前は空閑地になっており、御本殿を仰ぎみる宗教空間としての境内に相応しい風景でありました。ご参拝の方々からもその風景を懐かしみ惜しむ声が数多く聞かれますが、庁舎改築に伴いこの臨時の仮拝殿(現在の祈祷受付・待合所)を撤去し、御遷宮前の境内風景を復活して多くのご参拝の方々のご要望にお応え致します。
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新庁舎改築後、御本殿を仰ぎみる境内風景が復活しました。 -
この度、新たに改築された新庁舎 -
雨漏りにより銅板屋根となった屋上 -
斜壁の柱にある無数の亀裂 -
雨漏りのため柱内側につけられた樋 -
浸水により水溜りとなった地下室 -
斜壁の柱から毎日落ちる白い粉 -
雨漏りのため柱内側につけられた樋