ご挨拶

出雲大社-平成の大遷宮

出雲大社の御祭神・大国主大神様(だいこくさま)は、日本が豊葦原瑞穂国と称えられるような豊かな国をお造りになられ、農耕をはじめ様々な暮らしの業をお導きになられた神様であります。そして、その国土を皇室の御祖先神・天照大御神様に「国土奉還-国譲り」され、天照大御神様は目に見える世界(顕事・政事)を、大国主大神様は目には見えない世界(幽事・神事)を主宰される神様となられました。この大神様の奇しき大業により、天照大御神様の御子孫である代々の天皇陛下が日本をお治めになられる我が国の基が明らかになりました。
その大神様への篤い祈りとともに、古代出雲文化の象徴たる壮大な出雲大社御本殿と、そこに脈打つ伝統的文化的価値観は、悠久の時を越えて世々に受け継がれてきました。そして、数限りない先人たちは幾度となく繰り返されてきた御造営・御修造にその全てを注ぎ込み、祈りの蘇りと感謝の心を顕わしてきたのです。
現在の御本殿は、延享元年(1744)に御造営され、以来文化6年(1809)、明治14年(1881)、昭和28年(1953)、平成25年(2013)と四度の御修造を経て今日に受け継がれています。
御遷宮は御社殿の蘇りであると同時に大神様の御神威の蘇りであり、またそのお仕えを通じて習わせていただく日本の伝統的精神文化の蘇りでもあります。すなわち、数限りない祖先たちが幾多の困難を乗り越えながらも伝え継いできた篤い祈りと、その具現である御社殿を構築する素晴らしい伝統技術とともに、そこに現在の私たちが創造的知恵を加えて“心の造営”を生み成し、子々孫々の幸せのためにしっかりと日本の生命を伝えていくことであります。
次代の御遷宮に向けて愈々御神徳の宣揚に努め、より多くの皆様との御神縁を結んでまいるべく、全力を挙げて取り組んでまいる所存でございますので、皆様方には今後とも一層のお心添えを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

出雲大社 宮司
千家 尊祐