演目:伊賦夜坂(いふやさか)
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は、亡くなった伊邪那美命(いざなみのみこと)に逢いたくて死者の国である黄泉に行ったがそこには、体に蛆虫がわき醜い妻の姿がありました。
これにおののいた伊邪那岐命は逃げ帰ろうとしましたが、伊邪那美命は自分の醜い姿を見られたことを恥じて、黄泉醜女(よもつしこめ)に命じて伊邪那岐命を追わせました。伊邪那岐命は蔓草を投げ捨てると葡萄の実がなり、竹の櫛を投げるとタケノコが生え、黄泉醜女がそれを食べている間に逃げました。それでも追ってきたため、ようやく黄泉の国と地上の境である黄泉比良坂まで来たとき、そこにあった桃の実を投げたところ、追ってきた黄泉醜女は逃げ帰っていきました。
最後に伊邪那美命本人が追いかけてきたので、伊邪那岐命は千人がかりでなければと動かないような大岩で黄泉比良坂をふさぎ、悪霊が出ないようにしました。その岩をはさんで対面してこの夫婦は別れることになる。このとき伊邪那美命は、「私はこれから毎日、一日千人ずつ殺そう」と言い、これに対し伊邪那岐命は「それなら私は一日に千五百人生ませよう」と言いました。